人間の皮膚と境界感覚


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こんばんは。
何かと忙しく、更新が滞っております・・・。

さて、皆さん

人間の皮膚って

すごいんです!!

人体中で最大の臓器であり、外界からの情報を感知し中枢へと伝え、不必要な刺激から身体を守る。

そう、感覚器なのです。

人間の発生学的にみると、皮膚は中枢神経や目や耳などの感覚器と同じ、外胚葉から発生しています。
簡単に言うと、皮膚は他の臓器と異なり、その起源が中枢神経系と同じなのです。
人間の発生は受精卵から卵割(細胞分裂)しながら、お母さんの子宮内膜に着床してさらに分裂を繰り返す過程で、内胚葉・中胚葉・外胚葉と3層に分かれ、その後に各組織器官へと分化していくのです。

どういう事かと言うと、

中枢神経系や感覚器・皮膚は発生的に仲間であり、生命活動において深い関連性を持っているのです。

良く、お相撲さんや競走馬では、肌のツヤがいいですねー!なんて解説者がコメントしますが、あれはもしかしたら上記のような関連性を裏付けているかもしれません。
つまり、皮膚の状態が中枢神経系(運動神経含む)の状態を外界に反映している。
だから、肌ツヤのいいお相撲さんや競走馬は、神経系の状態が良く運動能力に反映されると言う解釈のはずです。

この皮膚ですが、物理的・感覚的に外界と自己を隔てる境界の役割をしています。

最近いらした患者さんの主訴で、

『自分が自分で無いような、現実味が無い感覚がして不快である。』とのこと。

これはもしかしたら、皮膚の境界感覚が薄れているのかも知れないと思いました。

身体境界説によると、

一人の人間を環境から区別している境界面は物理的には皮膚であるが、心理的には必ずしもそうではない。
不安や緊張が高まると、確固とした「自分」と言う感覚が薄れ、その場にいる人や物が皮膚を通って体内に侵入してくるような感覚に襲われる。

とあります。

似たような感覚を経験した事がある方は多いのではないでしょうか。
この患者さんはその感覚が持続していて、それがとても精神的ストレスになっていたのです。

このような状況への対処として、境界面つまり皮膚面の感覚を呼び覚まし、境界感覚を再認識してもらう事。
私はこのとき、鍼灸施術でこの方に必要なツボに出来るだけ丁寧な刺激を入れながら、不足する気を補う治療をしました。
東洋医学では、体外(皮膚面)を巡り身体を防衛する気として、「衛気(えき)」と言う概念があります。
また、人間の精神を支える気と肉体を支える気、「魂(こん)と魄(はく)」と言う概念があります。
それらと関係の深いツボの組み合わせを用いて、皮膚面から丁寧に鍼刺激を加えて行きました。

すると間もなく、この患者さんの不快な感覚は消失しました。

同じような状況に、乳幼児や児童の精神的境界面の一次的喪失からくる不安感。
それによる、様々な症状が出現することがあります。
この時、皮膚面の感覚を呼び覚ましてもらう行為として、お母さんやお父さんのスキンタッチ(スキンシップ)が大きな役割を示すと考えます。
私は、皮膚を介した身体感覚を養い、心を育む上での重要な基盤となる「感じる身体」を育てて行く事が、おそらく一番最初の親の役割であると学びました。

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鍼灸を用いなくても、身近な大切な人の為にできる事。
皆さんも、大切な人の皮膚に触れて下さい。
不安感から身を縮めている友人の皮膚に優しく触れ、そこから救い出してあげて下さい。

どうしても困ったときは、皮膚感覚にアクセスするスペシャリスト、鍼灸師へご相談下さい。