胆管癌


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こんにちは。

先日、女優・川島なお美さんの訃報がありました。

無念の降板から、お仕事復帰を目指して必死で闘病されていたのだろうと想像すると、胸を引き裂かれる思いです・・・。

ずいぶんとお痩せになられた姿もテレビで拝見しました。 さぞ、しんどかったと思います。

プライドも意思も強そうなお方でしたが、どんな思いで最期を迎えたのでしょうか。

心中よりお悔やみ申し上げます。

 

報道にもありましたが、胆管癌と言うのは極めて予後の悪い病気です。

胆嚢癌は女性、胆管癌は男性に多いと言われています。

症状としては、初期には無症状。腫瘍の拡大によりやがて胆道(肝臓-胆嚢-十二指腸を繋ぐ道)狭窄すると、胆汁がうっ滞して閉塞性黄疸を来します。

それにより、しばしば皮膚のかゆみや右脇腹の痛みを生じ、細菌感染などの合併症として胆管炎を発症し、進行すると食欲不振・体重減少が出現する。

血液検査による肝機能検査や腫瘍マーカーは早期診断にはあまり役に立たない。

つまり、症状が出た時にはかなり進行している事が多い癌です。

治療法は外科的に切除する事が唯一の方法だが、今回のように上部の胆管に癌が生じると切除率が低く予後も極めて悪いのです。

 

一般の方は、肝臓や胆嚢が体の中でどんな仕事をしているのか良く分かりませんよね。

肝臓の機能は多く、凄まじい種類の仕事をしています。

人工心肺はあるけど、人工肝臓はありませんよね? 変わるものが無いほど多くの仕事をしています。

今回は、胆嚢と一緒に行っている仕事を解りやすく説明してみたいと思います。

 

血液の中には、大きく分けて赤血球・白血球・血小板・血漿が含まれています。

赤血球は皆さんご存知の通り、肺で取り込まれた酸素と結合して体内の細胞へ運んでいます。

白血球は主に免疫機能に関わっています。

血小板は止血作用。

血漿は血球成分をのせる水分がほとんどで、その他に有機物(タンパク質・糖質・脂質)や電解質を含んでいます。

 

さて、このうち赤血球というのは、とっても細胞数が多いんです。

人体は約60兆個もの細胞で出来ています。(注意:体重により増減)

そのうち赤血球だけで約1/3の細胞数を占めています。

赤血球は酸素の運び屋ですが、やがて寿命(約120日)が近くなると働きが弱くなってきます。

この老廃した赤血球は脾臓へ運ばれ、脾臓の細網内皮系という場所(白血球が住んでいる目の細かいザルと思ってください)で破壊されます。

破壊された赤血球からは、ヘモグロビンが出てきて、ヘムとグロビンに分解されます。

グロビンは再利用され、ヘムは鉄を遊離して最終的にヘモジデリンと間接ビリルビンという形に分かれます。

(ヘモジデリンは別のところで処理されて、含有されていた鉄が再利用されます。←ここでは詳しく触れません。)

さて、この間接ビリルビンを代謝(処理)するのに、肝臓と胆嚢(胆管はその橋渡し)が働いていますので、そこを説明しますね。

間接ビリルビンは、血中のアルブミン(タンパク質の一種)と結合して肝臓へ運ばれます。

この間接ビリルビンという物質、この状態では毒性があります。 ですからこれを解毒して、不要な部分は体外に排出する必要があるわけです。

肝臓へ運ばれた間接ビリルビンは、肝細胞内で解毒作用のあるグルクロン酸という物質に抱合され、水溶性の直接型ビリルビンとなり無毒化されます。

この直接ビリルビンはその後、胆汁中に分泌され、胆道を経て十二指腸へ排泄されます。

また、この胆汁。

小腸で分泌されるコレシストキニンというホルモンの影響で胆嚢からジューーーッと分泌されて、食事からとった脂肪を乳化(水に溶けやすくする)して体内で処理しやすくする働きがあるのです。

さて、この胆汁と混ざって腸内へ運ばれた直接ビリルビンは腸内細菌の働きでウロビリノゲンという物質に変わり、その一部は再吸収されて門脈を経て再び肝臓へ運ばれ、残りは尿中に排泄されたり、排便されたりして体外へ出されるのです。

このビリルビンが分解され排出され再吸収される過程を腸肝循環と言っています。

ちなみに、このウロビリノゲンが酸化すると、ウ○コのあの黄色になります。

以上が、肝臓と胆嚢が協力してやっている仕事です。もう一度言いますが、肝臓のやっている仕事はもっともっと沢山あります。

最初に胆嚢癌の症状として黄疸に触れましたが、黄疸は上記の腸肝循環の経路の各段階で障害が起こると発症します。

閉塞性黄疸は、胆管癌で胆道の通過障害が起きるために、ビリルビンが小腸へ運ばれにくくなり再び血中に増加して、皮膚や粘膜が黄染される状態です。

ビリルビン=胆汁色素とも言います。黄色く染まる色素なのです。 またビリルビンは脂肪との親和性が高いため、皮下の脂肪組織へ集まり痒みが出やすくなります。

赤血球はとんでもない細胞数ですので、古い赤血球がどんどん壊され、新たに作られるサイクルが頻繁です。

ひとたび腸肝循環に障害が出ると、アッという間に黄疸の症状が出てくるのです。

また、新生児の黄疸も良く耳にしますよね。

これは腸肝循環の障害とは少し原因が異なり、溶血性黄疸という分類です。

胎児は8か月目位から赤血球数を急増させ、成人の120%位の数になります。

出生後、自身で肺呼吸を始めると不要な赤血球が一気に脾臓で破壊されます。すると脾臓で間接ビリルビンが大量に出来て肝臓に運ばれますが、新生児の肝臓にはまだ大量の間接ビリルビンを処理するほどん機能が備わっていません。ですので、処理しきれなかった間接ビリルビンが血中に増加して黄疸になってしまうわけです。

間接ビリルビンは毒性がありますので、血中に多く存在しているのは好ましくありません。

話がそれましたが、川島なお美さんは胆管癌のために上記の機能に障害が出た状態が続き、肝臓胆嚢の機能不全が起きてしまったのだろうと思います。

身体の恒常性はホメオスターシスと言われ、常に我々を正常な状態に保とうとする働きです。

様々な機能が複雑に絡み合いながら、微妙なバランスを保って成り立っています。

もちろんホメオスターシスの中には、がん細胞から体を守る作用も含まれています。

無理をしないで、たまには自身の健康の為に鍼灸でもどうですか?

↓彼らも複雑に絡み合っています。

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