夜尿症から小児の体調と体質をみる


By

以前、夜尿症の病院での治療に触れてみましたが、小児はりの役割については少ししか触れませんでした(汗)。

僕は鍼灸師ですので、もう一度夜尿症に触れてから本業である小児はりの目指すところをお話してみたいと思います。

さて、夜尿症の改善を期待して出されるお薬には大きく3種類あるようです。

1つは、夜間の尿量を抑えるお薬(抗利尿ホルモン薬

これは、鼻孔から噴霧して体内に吸収するタイプと、その後に出た口の中で砕いて溶かしながら吸収するタイプがあります。

鼻から噴霧するお薬は、鼻詰まりなどの鼻炎があると使いにくいし携帯に不便。

口の粘膜からとるお薬は、飲み込んではいけないことや副作用を起こさないで効果を上げるために、口をすすぐことも許されない厳重な水分摂取制限があります。

また、お薬中止後に再発が50%の児に見られるということ。なので、半分の量にしたり隔日にして徐々に減らす工夫がされているようです。

2つめは、機能的な膀胱容量を増やすお薬(副交感神経遮断薬

抗コリン薬ってやつです。これ以外にも、パーキンソン病の治療や胃酸を抑える薬でも使用されています。

自律神経をお薬でコントロールすることで膀胱を膨らました状態に維持しましょう=おしっこが沢山溜まることを狙っています。

便秘や口渇などの副作用も見られるため、便秘の児には向いていないかも知れません。

3つめは、その他の種類です。

三環系抗うつ薬・・・夜尿症の約50%に有効だそうですが、副作用も重篤なものが報告されており最終手段で使用される様です。(アメリカでは使用禁忌)

抑肝散(よくかんさん)・・・夜泣き・カンムシ・不眠・虚弱体質改善に使用される漢方薬ですが、この漢薬の中に体の余分な水を取り去る薬味が入っているためでしょう。

抑肝散の処方(薬味)と各々の効果にも触れてみましょう。

・蒼朮(そうじゅつ) 燥湿作用>体の中の湿気を乾かす。

・茯苓(ぶくりょう) 利湿作用>主に尿から余分な水を出す。

・川芎(せんきゅう) 活血作用>血を動かす。

・当帰(とうき)  養血作用>血の生成を助ける。

・釣藤鈎(ちょうとうこう) 平肝作用>気の高ぶりを抑える。

・柴胡(さいこ) 疏肝作用>滞った気を動かす。

・甘草(かんぞう) 諸薬調和>それぞれの薬味を調和させる。

つまり、抑肝散は、体の余分な水分を除いて、食事から効率よく栄養(血)を作って全身に回し、気の高ぶりを鎮め、うつうつした気を動かす事で健康を取り戻しましょうというお薬です。

それぞれの薬味から分かりますよね。さて、ここまで紹介した夜尿症のお薬。

何か感じませんか?

抑肝散以外のお薬は、効果はあるけれども使いにくかったり、副反応を監視しなければならなかったり、飲水の我慢も必要です。

服薬をやめてしまえば、再発の確立も低くはありませんね。自律神経という自然な体内のリズムに手を加える薬。三環系抗うつ薬に至っては、強い副反応を考慮すると小児の夜尿に使用するべきお薬でしょうか?

お薬を飲んでも、就寝前に服用したら口をゆすぐ事も制限しなければならない上、飲み合わせた薬によっては、さらに口渇や便秘などの副反応も出るかもしれない。症状を改善し、治癒するためにはどっちにしろ一定の努力が必要なんですね!

もちろん、抑肝散だってお薬です。その適応については注意が必要である事は変わりませんが、抑肝散の効能を見返してみると小児を全体的にサポートする事がメインで、少しだけ水分の代謝に触れていると思いませんか?

小児はりを行う目的も抑肝散で目指すところと同じなのです。

それは、夜尿症のこどもに散見される、「便秘」「鼻炎」「眠りが浅い」などの症状にも着眼している点で同じで、「食う」「寝る」「出す(排便)」の様な基本的な生理機能を正常に保ち、こどもに見られやすい風邪や鼻炎にも対応する事で、こどもの生活の質を向上させるという視点でもあります。つまり

例えば、

便秘から考えられる腸の機能低下もアトピーやアレルギー症状を増悪させている原因になりえるし、食事の質と量に問題があると正常な排便がされないどころか、健全な発育にも悪影響を与えます。

鼻炎の子は、口呼吸で顎が上がって背中が丸まって股関節と膝関節がいつも軽度屈曲位(ちょっとまがっている)だし、座る姿勢もだらしない。そうするともっと息苦しくなって、勉強に集中できない。人の話も耳に入らない。運動能力も育たない。

眠りが浅い子は、深い睡眠が足りないので朝方尿意をもよおしても目が覚めない、朝からダルい、布団から出れない、朝ごはんが進まないから親から叱られる、もっと悪いと食事をとる時間が無くてそのまま登校する。そうすると、午前中から午後にかけてもぼーっとしている。低学年なら、ぼーっとしている間に下校の時間です・・・。

どうですか?こんな状態で夜尿症が治るはずないですよね?

こんな習慣や体質のまま大人になってしまうと、、、、。 ガーーーーーーーンッ!! 本当に病気になってしまいますよ!?

最初に紹介したブログにも書きましたが、夜尿を改善するには本人と保護者の前向きな姿勢と努力が必要なんです。

保護者の方がこの視点を持って、小児はりを受けて頂けると我々が目指すところを理解して頂けるのではないかと思います。

便秘や鼻炎、睡眠の状態は、症状特有の反応が体表に現れます。これに対して小児はりやお灸を施術してゆくと、やがて便秘や鼻炎、睡眠が改善されてきます。

こどもによって改善される速度も、経過もみんな異なりますが、体質が改善されてくるとポツリポツリと様々な症状に良い変化が出てきます。

焦らず、腰を据えて、じっくりと向き合ってこそ得られる結果です。こどもの自己治癒力を最大限に発揮させて、体の芯から健康でいることをサポートしてあげたいなら小児はりをお勧めいたします

IMGP0058