統一体観は、もう東洋医学だけのものではない


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「痛み」

痛みが発生する機序は複雑であることが多い。

例えば慢性腰痛は国民病ですが、非特異的腰痛といって原因のはっきりしない腰痛がその大部分だと言われています。

整形外科の日常診療では、非特異的腰痛(原因がはっきりしない腰痛)が80〜90%をしめるそうです。驚きですね!

非特異的腰痛は、例えば、外傷や骨折、感染症や腫瘍、下肢への神経症状など疾患による症状を含んでいないものを言います。

つまり、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの診断が下されれば、即治療につながるかというとそういったケースは、臨床現場では実際には少ないということです。これが事実です。

そしてさらに、最近では心理・社会的因子は力学的因子よりも疼痛とその進行の強力な予測因子であるとの報告もある。

椎間板ヘルニアの患者さんが二人いたとしましょう。

二人とも椎間板ヘルニアの神経根への圧迫度が同じだったとしても、仕事のストレスや不安や抑うつの程度によって、痛みの程度に差がでる可能性がありますよっていうことです。それが分かってきましたということです。

だからって、慢性疼痛にオピオイド処方っていう現代医学のひとつの医療を私は容認できませんが。

東洋医学の思想は「統一体観」です。

つまり、自然と私は一つであるという考え。宇宙と小宇宙である私のからだ。別々に存在しえないという根本的な思想のもとに、その延長戦に心身一元論があると思います。心も体もひとつですよという考え方です。これが、2500年以上前から今に伝えられる東洋医学の根っこです。

ですので、上に書いたような報告は東洋医学からしたら「何を今さら・・・。」的なんです。

そうなると、慢性腰痛の患者さんの痛みを訴える腰を治療すれば痛みは消えるという考え方も、根本から転換しなければならないのかもしれません。

誤解を避けるために言いますが、東洋医学がそれだけを見ているのではありません。

腰痛に対する鑑別も体系的に存在し、痛みの要因を絞っていくという過程は当然あります。

しかし、腰痛に限らず苦痛の原因は、必ずしも身体所見の中だけにあるとは限らないので、昔から多角的な問診や診察を大切にしている医療の代表が東洋医学であり鍼灸であります。

以前のブログでも少し触れていますが、慢性の痛みを持つみなさんも身体と精神との関係を見直す必要がありそうですね。

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