母乳と赤ちゃんの関係


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ここのところ、小児の免疫について触れてきました。
もう少しだけその続き。

母乳と免疫について。

今までにこんな事を紹介しました。
・1万数千年の間、人類は感染症に対して目立った進化は遂げていないと言う事実。
(人類の生存率の向上は、栄養状態の改善、衛生環境の向上、ワクチンの開発によるもの)
・人の腸管には、最大規模の免疫系が存在しており、腸内の環境は人の免疫に大きく加担していると言う事。

特に赤ちゃんは胎児期の無菌状態から、産道通過直後から細菌・真菌・ウイルスの世界へ誕生し、それらに容赦なく暴露される訳ですから、出産後の赤ちゃんの脆弱な免疫機能だとちと心配・・・。

しかし、そこには良く出来ている生体防御機構があるのです。

それはまさに、母子愛で育まれる最強の防衛機能。
ここにオヤジが入り込む隙はありません(笑)。

赤ちゃんは出生後、一般的に母乳で育ちます。
いっぱい泣いて、おっぱい飲んで、ねんねして、屁こいて、う○こするのが仕事です。

この母乳栄養は理想的な新生児の自然食。
栄養学的背景や愛着形成の側面からも、親子に様々な恩恵をもたらします。

そして今回は、母乳保育が多様な感染症から子を防衛する作用がある事を取り上げたいと思います。

母乳には、オリゴ糖・複合糖質・ビタミン・中性脂肪・遊離脂肪酸などの栄養素に加え、IgAを代表とする免疫グロブリン・サイトカイン・補体・ラクトフェリン・カゼイン・リゾチームなどの液性免疫、マクロファージ・好中球・リンパ球などの白血球による細胞免疫が含まれています。
上記以外にも目が回るほど沢山の生体防御に働く因子が含まれています。

特に初乳には免疫グロブリンのIgAが大量に含まれており、赤ちゃんがこれを母乳を介して摂取すると、この免疫グロブリンが赤ちゃんの粘膜である気管や腸管をコーティーングして細菌やウイルスの侵入を防いでくれます。
この免疫グロブリンIgAは、お母さんの腸管内のリンパ組織で約70%が生産されて乳腺へと運ばれ、乳汁にまざって経口的に赤ちゃんの体内に入ります。そうすると、上記の様に赤ちゃんの免疫系として威力を発揮してくれるのです!!
すでに述べたように、母乳内にはIgA以外にも赤ちゃんの免疫に働く成分は沢山入っていますが、IgAが産生されて赤ちゃんの免疫系になるまでの過程が一番象徴的ですので、もう少し詳しく紹介したいと思います。

IgAはお母さんの腸管内リンパ組織で産生されると言いましたが、解りにくいですよね。
もう少し分かりやすく。
以前のブログでも紹介しましたが、人の腸管と言うのは人体最大の免疫系として機能しています。
http://blog.livedoor.jp/hari_kyuan/archives/1035805855.html
例え、夕刊を読んでいる時でも腸管では免疫機能がフル稼働しています。ごめんなさい。

外界は細菌ウイルスだらけ。
地球に生きている爬虫類や哺乳類なんかとは桁違いに、彼らも大量に生活している訳です。

それだけ存在しているのですから、人は食事や空気からそれらを体内に入れてしまいますよね。

野菜やお肉の他、鼻水を吸って飲み込んだり、鼻くそをほじって口に入れば、そのまんま消化管へ。
すると彼らも一緒に入ってくる。

いずれそれらは腸管に到達しますね。

そこで、待ち受けているのがリンパ組織を始めとする人体最大級の免疫系です。

免疫細胞達は、腸管を通過する細菌やウイルスを常に監視して、人体にとって有害なものを感作します。
感作と言うのは、『悪いやつを見つけたぞ!!』と認識する事です。

すると、免疫細胞の中には賢いのがいて、抗原提示といって回りの免疫細胞達に『こいつが悪いやつだぞーーー!!』と教えてくれるのです。すると、そこに様々な免疫系で働く因子が集まってきて、悪さをする細菌やウイルスをやっつけてくれます。
その一連を免疫応答と言います。

そして、そこでは終わらず次に同じような悪さをする細菌やウイルスが体内に侵入して来た時に備えて、抗体を産生するのです。ここで出来た抗体の一つが、今回紹介した免疫グロブリンIgAなのです。

それを人工的に作ったのが、皆さんがご存知のワクチンですね。
ちなみに、ワクチン摂取については、以前のブログでも触れました。
http://blog.livedoor.jp/hari_kyuan/archives/1035462912.html

赤ちゃんはお母さんの産道を通過する際に、お母さんの持つ細菌やウイルスに最初に暴露されますね。
排泄する器官の出入り口の付近を出血を伴いながら出てくるのですから、当然です。
その時に、赤ちゃんに感染した細菌やウイルスに対する免疫が無いと困った事になります。

ですから、お母さんの腸管で感作された細菌やウイルスに対するリンパ球のB細胞の一部が、感作した細菌やウイルスをやっつける免疫グロブリンを産生する専門家である形質芽細胞に変化して、それが腸管へ分布する血管を利用して、最終的に乳腺へ遊走し形質細胞へ分化(変身)する。ここで、乳腺内の形質細胞から産生されるのが免疫グロブリンIgAです。
それが乳汁へ分泌されて、赤ちゃんの腸管へ摂取される。
腸管から吸収され、最初に言ったように粘膜をコーティングして免疫系として機能するのです。

どうですか?ちょっと解りにくかったかもしれませんが、母乳の威力。
生体防御機能を補うシステムが母乳から得られているなんで、母親の無限の愛情を感じますよね。
母乳をあげているとお母さんにも良い事が沢山。
それについては、次回以降にでも。

いずれ母乳も止める時がやってきます。
その時に、親子ともども心身のバランスを崩しやすくなります。

そんな時は、

お母さんには鍼灸施術。
https://hari-kyuan.com/hujinka/

お子さんには小児はり。
https://hari-kyuan.com/syounihari/

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