小児期の免疫と予防接種


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ここ最近、服薬や予防接種について皆さんの考えが多様化し、それらについて否定的な考えを持っている方も多くおられます。
私の治療院に来てくださるお母さん達も、様々な意見を持っておられます。

「鍼灸治療院をやっているから、当然先生はステロイドや予防接種は反対派ですよね!?」と良く言われます。
それに対する私の意見は
「反対派ではありません。」

なぜなら、ステロイドにしても睡眠導入剤にしても予防接種にしても、中途半端に利用して中途半端に止める方が時々いらっしゃるから、そのように答えています。

どれもこれも、素人が自己判断で加減して良いものではありません。
例えば、皮膚のかゆみなどに対するステロイドは抗炎症・抗アレルギーの為に処方されます。
皮膚科に行って処方箋のままにもらってきたけど、塗らない。塗ったり塗らなかったり。
このせいで、炎症が出たり引っ込んだりを短期間に繰り返してしまう子を見る事があります。
それなら最初から使わなきゃいいし、使うならVeryStrongでもがっつり効かせて短期間で炎症を抑える。
それから、徐々に仕切り直しで治療していけばいいと思うんです。

睡眠導入剤もまさに先日「もらっている薬を半錠飲むようにしたら、3時頃目が覚めてそれからなかなか寝付けないんです。困りました。」と。
そりゃそうです。
それなら、主治医に相談して様々な種類の中から加減してもらえばいい。
勝手に半錠なんてするから、結局睡眠障害が残ってしまい、本来の目的を見失う。
人間が眠れなければ様々な問題が出てきます。
だから、薬でコントロールすると決めて西洋医に掛かったなら、ちゃんと薬を飲み切って質の良い睡眠を担保しなければ、意味がありませんよね。

体力が十分に回復して、それから徐々に睡眠導入剤を変えていって、それらがいらない様になるお手伝いを鍼灸ですればいいと思っています。

さてさて、問題の予防接種。
小児はりをやられている先生の中でも、断固反対派と賛成派と私の様にどっちつかずがいる訳です。

私のどっちつかずの理由を述べます。
予防接種は、ごく稀に重篤な副反応を示す事があります。それが重篤であるがゆえにごく少数であっても、問題になる訳ですが、逆に予防接種を受けなかった場合に、その病を発症し重篤になる場合。このリスクは、素人の皆さんの間ではじっくり吟味されていないと感じます。

例えばこんな話。
人の免疫には大きく分けて、自然免疫と獲得免疫があります。
これらの違いについては、予備知識が無いと理解しにくいと思いますので割愛しますが。

過去、人類の最大の敵は感染症でした。
19世紀までは死因の60%が感染症だったのです。
ヨーロッパでさえ、この頃は35%の人しか40歳に到達できなかった時代です。

では現代はというと、
現在の最貧国のひとつであるモザンピークでは、平均寿命48歳で40歳に達するのは約50%。
19世紀までとさほど変わらないのです。
次に日本を含む先進国では、平均寿命80歳以上でほぼ100%の人が40歳に達しています。
この事実が示すのは1万数千年の間、人類は感染症に対して目立った進化は遂げていないないのだと言う事です。
つまり人類の生存率の向上は、栄養状態の改善と、『衛生環境の向上とワクチンの開発』によるものなのです。

また、免疫学的には獲得免疫が十分でない年少児は、生まれ持った自然免疫だけで病原体に立ち向かわなくてはなりません。そうなると、19世紀までは40%が、モザンピークでは20%が5歳までに死亡してしまいます。

この結果から、生まれ持った自然免疫の役割は60%の人類を守るのに有効だが、残り40%は感染症に倒れてしまうと言う事が分かります。

しかし、5歳以降は獲得免疫が発達し、急激に生存率が上がるのです。

ですから、自然免疫だけで守られている5歳までの乳幼児に対しては、衛生環境の整備と上記の考え方に従うならばワクチンの摂取が望ましいと言う事にもなります。

それからもう一つの視点。
予防接種は本人の為に行う意味と同じくらい、社会的な意味合いが重要です。
つまり伝染病の発症を抑えて、周りの同年代に広めてしまうリスクを軽減しましょうってことです。
だからこの視点で行くと、本人や保護者が何と言おうと保育園や小学校に通わせる以上、予防接種を受ける意味合いが高まる訳です。社会的に。

そんな事をよーく考えて、あとは保護者の責任で選択すればいいと思います。
あくまでも中途半端はいけません。
しないなら、徹底的にしない。
するなら、徹底的にする。
あなたのお子さんは、まだ自分では判断できないのですから。

中途半端は、子供がかわいそう。

そう思います。

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