お母さんの手
患者さんの状態を把握するために、様々な方法を用います。
私は接診(せっしん)を大切にします。
患部やお体に触れ、皮膚やその下の組織がどの様な状態かをスキャンして治療の組み立てをします。
小児の治療では特に皮膚の状態が重要です。
皮膚が乾燥していたり、発赤していたり、産毛が多かったり、局所的に硬くなっていたり、冷たかったり。
皮膚ひとつからも相当な情報が得られます。
そして、治療後の変化も明瞭です。
皮膚に触れているだけで、皮膚の状態が変化することもあります。
鍼治療の事が書かれている古典(黄帝内経霊枢)にも、
「病邪の集まっているところは、その部位を触れてみると特に硬くなっている。」
とあります。
皮膚の状態を把握する事は、はりきゅう治療にとって大事なポイントなのです。
その点、お母さんの手と言うのは最高の条件がそろっています。
お子さんはお母さんに触れてもらうだけで安心し、それだけでも良くなる事があります。
お母さんはお子さんの皮膚に触れると、お子さんに対する愛情を再確認するでしょう。
ですから、私の治療院ではお母さんにお子さんの自宅治療をお願いしています。
治療と言っても難しいものではありません。手で触れて、お灸(せんねん灸)をしていただく程度です。
これでもって、かなりの効果があります。
まさに、掌(たなごころ)を実感する瞬間です。
手には心があると思います。
嫌なものに触れるとき、掌で覆うように触れる人いますか?
おそらく触らないか、触らなければならないなら、ツンツン触るくらいでしょう。
大好きな人が落ち込んでいるとき、指先だけで恐る恐る触れますか?
きっと温かい掌で肩に触れ、励ますと思います。
お子さんにとって最高の薬は、お母さん(お父さん)の掌です。