不妊症
※不妊症の定義
「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない場合を不妊という。その一定期間については1年というのが一般的である。なお、妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない。」
※平成27年8月 日本産科婦人科学会 (WHOおよびASRMも1年)以前は2年でしたが、昨今の晩婚を考慮した変更だったのでしょう。
上のグラフは、既婚女性の年代別不妊割合を示しています。
当然、年齢と共に不妊割合は増加します。特に、35歳以降優位に増加しているのが分かると思います。
こどもを授かるという事に関しては、母体の年齢が妊娠に影響するのが事実。
この後ご紹介する、東洋医学で考える「腎精不足(じんせいぶそく)」「腎虚(じんきょ)」の状態に繋がります。
不妊症の原因
次に不妊症の原因に触れていきます。
不妊の原因は様々で、いくつかの原因が重なっていることも少なくありません。
それは、洋の東西を問わずです。生命体ですからね。
原因となっている疾患全てをここで解説することは出来ませんが、一般的なものをご紹介した後、
東洋医学では? きゅうあん鍼灸治療院では?
どのように捉え施術していくのかを説明していきます。
下の円グラフを見ると、因子無し、原因不明の不妊もあります。
また、男性側の割合も両方とあわせると無視できないことが分かりますよね。
日本生殖医学会編;生殖医療の必須知識2014
女性因子
子宮頚管粘液の異常(頚管粘液不全、抗精子抗体)
卵管の異常・狭窄あるいは閉鎖
排卵障害(PCOS、卵巣機能低下、高プロラクチン、ホルモン分泌異常)
ピックアップ障害、受精障害、子宮因子着床障害
子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、黄体機能不全(現在は定義が?)
免疫性不妊
男性因子
勃起障害
射精障害
精子の産生異常(無精子、乏精子など)
次に不妊症の原因となっている因子ごとの割合です。
大きく見渡せば、不妊の原因は女性側に見られることが多い様です。
ただし、誤解してはいけません。
当然ですが男性も年齢により生殖能は減退していきます。
不妊は夫婦で取り組む問題です。
次に東洋医学的な原因を考察します。
東洋医学では、女性が妊娠するための核心(コア)はひとつです。
それは、
《先天的・後天的な腎精不足もしくは衝任脈の気血不足が基盤となり発症する》ということ。
さらには、特に因子無し、原因不明と診断されている方がこの状態により当てはまると言えます。
東洋医学では何を言っているのか。
「先天的・後天的な腎精不足」つまり、生来の虚弱、加齢、疲労蓄積、大病後などによる生殖機能の減退のこと。
さらに、
「衝任脈の気血不足」で不妊になると言っている。
衝任脈とは、
衝脈と任脈という体内循環の経路です。子宮や卵巣の活動を支えるもの。
自律神経や性ホルモンのことだと理解しておいてください。
その体内循環経路の気血不足ですから、子宮や卵巣が自律神経や性ホルモンのサポートを十分に受けられない状態ということです。
もう少し詳しく表現すると、卵胞の発育、定期的で正常な月経の発来、子宮内膜(東洋医学では胞宮という)の代謝活動や免疫寛容機能は、東洋医学、六臓六腑の捉え方では「腎」が持つ生殖発育機能によって、天癸(性ホルモン、ゴナドトロピン、GnRH全てだと思ってください)を発動させて衝脈と任脈という体内循環を利用して正常になされるのです。
これを、東洋医学の言葉で言うと、「腎気が旺盛となると任脈が通じ衝脈が旺盛になる」となります。
逆に、「腎虚や血虚では胞宮へ注ぐ衝任脈を滋養できない」ため不妊が起こるのです。
それ以外の原因として、
《寒邪や痰湿など外邪の影響で胞脈(子宮)が寒凝したり痰湿が衝任脈を阻滞させると受胎不可となる》
と説明している。先ほどの衝脈と任脈の体内循環を滞らせる要因として、暑さ・寒さ・湿気などの体外環境に対する耐性も問題です。
その他、
《手術などにより骨盤内に生じた瘀血の停溜などでも不孕となる》
つまり、外科手術などにより腹腔内に残留した瘀血(循環していない古い血)など体外からの要因で不妊を助長するものがあるということです。
ただし、実際にはこれら内因と外因が複合的に関与して不妊症を発症していることが殆どです。
これまでに現代医学的な捉え方、東洋医学的な捉え方をご紹介しました。
このような内容を書けば、それは相当なパターンをご紹介する事になりますが、ここでは最も多いケースをして紹介しました。
よって、最もベーシックな不妊症の捉え方です。
次に、きゅうあん鍼灸治療院ではゲストの皆様と、ご懐妊と元気な赤ちゃんを出産するというゴールに向かってどう歩んでいるのかをお伝えしたいと思います。
きゅうあんの施術
先に書いておきます。
きゅうあん鍼灸治療院の不妊専門鍼灸は、妊娠をゴールとしていません。
あくまでも、元気な赤ちゃんを出産することがゴールです。
ゴールを達成するために、大きく分けて2つの方向から不妊症を改善します。
それが、ミクロ治療とマクロ治療です。
ミクロ
現代医学的視点・組織器官の構造を考慮した解剖学的な捉え方。
※例えば、卵巣動脈の血流を改善するためにどの自律神経を狙うのか、など局所の機能を改善する治療。局所の神経伝達・血流を向上するための施術を行うことにより、組織器官が最大限の機能を発揮するための循環改善などがこの考えを元にしたミクロ治療です。(と勝手に命名しています)
ホルモンの分泌・輸送・調整という視点からも、
【視床下部(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)→脳下垂体(性腺刺激ホルモン)→血行性に性腺(卵巣)へ→卵巣から性ホルモン分泌→子宮内膜へ働きかける→負のフィードバックにより血中のホルモン量が調整される】という一連の機能が正常に働くことが必要です。(以下のイメージを参照)
この様に、視床下部ー下垂体ー卵巣系の間で何らかの問題が生じると、性ホルモンの作用下で成立・維持される妊娠も難しくなります。
この循環を調えるために当院では、全身の血流を促す→星状神経節への近赤外線照射・・交感神経の働きを抑えて、全身の組織器官への血行を促すこと。
特に、脳血流を促進する。性ホルモン分泌の上位である視床下部-脳下垂体の血流を改善すること。(視床下部から脳下垂体へのホルモン分泌は血流による液性分泌)
<スーパーライザー(近赤外線照射装置)の併用>
スーパーライザーは、光の中で最も深達性の高い波長帯の近赤外線(0.6~1.6μm)を高出力でスポット状に照射することを可能にした初めての光線治療器。
その効果はペインクリニックをはじめ各科で認められ、医療現場で大きな注目を集めています。
スーパーライザーによる星状神経節照射と鍼灸治療を併用することで、より優れた治療効果を発揮します。
星状神経節とは、のどのところにある星状神経節という交感神経細胞が集まって太くなっている神経の部分です。
星状神経節照射(SGL)は、この星状神経節に近赤外線を照射し、交感神経部の作用を抑える療法で、安全・無痛であることから非常に受け入れやすい治療法です。
この療法は自律神経の中枢である視床下部に影響を及ぼし、全身的に交感神経の緊張を緩和します。
交感神経の過緊張は、血流の巡回障害が起こり、ホルモン分泌が乱れ、病気を防ぐ免疫の働きも低下するというように、全身的にさまざまなトラブルを作り出し、様々な病気や
症状が起こってくるわけです。それに対して、星状神経節照射療法は、おおもとの原因である交感神経の過緊張を緩和するので、色々な病気や症状が治ってくるのです。
そもそも人の体には、体内に生じたいろいろな機能のアンバランスを元の状態に復元しようとする作用「ホメオスタシス」(生体の恒常性維持)の機能があります。
「ホメオスタシス」とは、体温の調節、代謝の調節、ホルモンのコントロールといった生体の恒常性を維持するためのさまざまな働きのこと。
これを統括しているのが視床下部です。視床下部は、免疫系、内分泌系、自律神経系へそれぞれ指令を発して体の恒常性維持を図っているのです。
星状神経節照射は、その視床下部に作用して自律神経系、内分泌系の歪みを直し、ホメオスタシスを回復させる治療なのです。
星状神経節照射の自律神経系に対する作用は、まず全身の交感神経の過緊張を緩和し、うっ滞していた血行を改善することです。
皆さんがそれぞれ持っている自然治癒力を発揮させるのが血流です。血液の中には細胞を活性化する酵素や栄養分とともに免疫物質もたくさん含まれています。
ですから、血液循環をよくすることが、あらゆる病気の治療法の基本なのです。
マクロ
東洋医学的視点・人体の機能を全体的に調整(たとえば、体の中に水を溜め込みやすい体質、熱がこもりやすい体質を改善する治療)していきます。
より東洋医学的な視点でサポートする方がうまくいくことが多いのが、この不妊症だと実感しています。
全人的に捉え、改善していくという考えです。
東洋医学の、陰陽・虚実・寒熱・経絡・藏府の理論。
低温相から高温期に入る変化は陰陽転化でたとえられます。
不妊症を治療する際には、東洋医学の根本である『陰陽説』の視点が重要です。
例えば、基礎体温の低温相と高温相の変化は陰陽消長・陰陽転化の現れと考えます。基礎体温の乱れは陰陽消長に問題があると捉えていきます。
この様な捉え方は、基礎体温だけではなくホルモン分泌のバランス(負のフィードバックによる調節)や自律神経の働きなどは、東洋医学では昔から陰陽の視点で捉えられていたのです。どちらもシーソーのように切り替わるのではなく、ヤジロベーのようにゆったりとそのバランスを保ちながら変化していくことが大切であると考えています。ですので、当院の治療はいつもヤジロベーのバランスを取り戻していただくことに重点を置いています。
例えば、当院のケースとして(あくまでも一例です)。
子宮筋腫核摘出手術を経験している女性。
子宮筋腫核を摘出している方は、体内の熱の循環が悪く、皮下組織が硬く弾力が無い傾向が見られます。
このような状態だと、子宮内膜にも体内のホルモン調整(GnRH)にも問題が出てきます。
結果的に排卵後も基礎体温が高温相で安定しません。
また、摘出手術を受けていますので子宮や周辺組織の瘀血(瘢痕など)も考慮しなければなりません。
これらは不妊に直結しやすい問題ばかりです。
そのような所見が確認されたら、体内を空冷・水冷してくれる肺と腎を協調させるツボを選択して施術します。
陰陽のバランス、つまり自律神経系のバランスを整えるため督脈・任脈という体内循環の経路にあるツボに施術します。
鍼灸(外治法)だけで難しいときは、漢薬(内治法)もおすすめしています。
※当院では内治法のアドバイスのみ。薬膳、糖質制限のアドバイスは致します。
このケースの様に不妊の原因は人それぞれですから、当院を利用して下さっているゲストの状態を詳しく調べて、補益腎気、滋陰養血、調理衝任、温中散寒、去痰清熱、活血化瘀などの治法を単独もしくは組み合わせて治療を組み立てることが多いです。
きゅうあん鍼灸治療院の不妊専門鍼灸を担当するのは、今のところ院長です。
日本不妊カウンセリング学会にも所属し、現代の病院で行われている最新の不妊治療や婦人科疾患に関する生理・病理学を常に学び続けています。
当院を選んでくださったゲストに提供するのは、東洋医学の研磨されつくした技術と、鍼灸院で提供できる限界まで追求した現代医学の知識です。
その他にも
治療の期間について、
患者様の状態によって変わります。
排卵・受精・輸送・着床・妊娠の維持どの段階に問題が生じているかを確認。
また、自然妊娠、人工授精、体外受精など、どのようなステージで妊活されているか。
ただし、共通して重視するのは、
「卵子の質」です。
AMHなど病院で行う検査もありますが、きゅうあん鍼灸治療院で重視する「卵子の質」はこれよりさらにマクロになります。
先ほどまでに述べてきたあらゆる方法により、貴女の身体を改善させること。結果的に卵巣のおかれている状況を改善すること。
同じ身体では、駄目です。
健康という土台を無視した妊活は、ゴールに到達するのが困難です。
あなたの身体を見つめ直し、健康になるその延長線上に「元気な赤ちゃんを授かり産む」というゴールがあると信じています。
ですから、健康になること、その上で排卵を迎える卵子が変わるのは90日~200日と考えます。
もちろん、その他の要因もあればこの期間によりません。
しかし、どのようなステージで妊活されている方も、きゅうあん鍼灸治療院の不妊専門鍼灸を加えて頂くことでグッとゴールに近づく事はここまでで述べた通りです。
鍼灸を受けていただくペースについても、原因により人それぞれです。
例えば、着床に向けた準備(子宮内膜の視点から)ですと、
どのような段階の方も、子宮に到達した胚(受精卵)は、受精から7日目頃に準備の整った子宮内膜に潜り込み着床します。
子宮内膜自体は月経終了後から増殖し始め、排卵を機に胚が着床しやすい環境をつくる分泌期に入ります。
だから、自然妊娠、タイミング療法段階であれば、月経終了から子宮内膜の修復・増殖をサポートするため、排卵を迎える日までに1から2回の施術、排卵日以降は子宮内膜の水分量を増やし子宮内膜腺からの粘液分泌を助けるため、排卵日直後、排卵から7日目前後に計2回の施術を受けていただきます。