月経周期異常

月経周期異常のイメージ画像

東洋医学では、月経周期に異常がみられるものを総称して「月経不調」といい、月経周期が早まるものを『経早』 、遅れるものを『経遅』 、不定期なものを『経乱』といいます。
月経周期異常は、月経量や持続期間の異常も伴うことがありますが、ここでは月経周期とそれらを調整している機能について、東洋医学の考え方と治療法をベースに紹介していきます。
また、これらの問題は症例ページでも紹介している「生理痛」や「不妊」の原因になることも多いため、当院では症状にあわせてオーダーメイドの治療を提供しています。

正常な月経周期は、25日~38日の間であり、その変動が6日以内であること。 これが一般的な正常周期とされています。
ここから、
月経周期異常のイメージ
月経不調
・24日以内の間で月経  頻発月経「経早」
・39日以上の間で月経  希発月経「経遅」
・月経周期が不定期  月経不順「経乱」

月経周期異常の原因

月経は、ある一定期間で子宮内膜が剥離し体外へ排出される生理現象です。
定期的に子宮内膜を新生することで、新しい生命を宿す準備しているといえます。
定期的な月経を迎えるためには、
【視床下部(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)→脳下垂体(性腺刺激ホルモン)→血行性に性腺(卵巣)へ→卵巣から性ホルモン分泌→子宮内膜へ働きかける→負のフィードバックにより血中のホルモン量が調整される】
という一連の機能が正常に働くことが必要です。(下図を参照)
HPO Axis

この一連の機能は、東洋医学で「天癸・藏府・気血・経絡」が協調して子宮に作用することにより生じる生理現象であると考えられています。したがって、これらの要素のいずれかもしくは複合的に機能不全となったときに、月経の発生と調節作用に問題が生じるということになります。
ここで、聞きなれない言葉がでてきましたので簡単に説明します。
天癸(てんき)・・・東洋医学では、体を成長発育させ、生殖機能を働かせる体内物質とされています。天癸は父母から受け継いで生まれ持っていますが、その後成長の過程で成熟していく精気のひとつです。現代的に言うと、成長ホルモン・性腺刺激ホルモン・性ホルモンの働きに近い物質だと言えます。
臓腑(ぞうふ)・・・五臓六腑という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。東洋医学では体内の臓器とその働きを総称して臓腑としています。つまり、肝臓であれば肝臓そのものと肝臓の働き(例えば解毒)も含めて『肝』と呼びます。月経の正常な発来に関係している臓腑は、特に腎・肝・脾(胃)です。月経に関わる機能だけをプックアップして説明すると、腎は卵巣や子宮の生殖機能の働きを、肝は子宮への血量の調節を、脾(胃)は消化器の働きを指し卵巣や子宮への血や栄養の源にそれぞれ関わっている。これ以上の臓腑の働きの詳細については非常に細かく分類されており、それらが絶妙なバランスをとって月経周期の調節を行っていますので、ここでの説明では書ききれません。ご興味のあるかたは、当院にお越しの際に施術者に質問してください。
気血(きけつ)・・・月経の主成分は血であり、月経の正常な発来においては血が物理的な基礎となっている。また血は気より生まれるとされ、気が脈管をめぐることにより、その力に引っ張られる様に血も脈内を循環すると考えられています。正常な気血は現代でいう、栄養と酸素を含んだ血液が血管を流れ体内をくまなく巡っている状態をいいます。衝脈
経絡(けいらく)・・・経絡とは体内・体外を巡る情報伝達系のことです。これは脈管や神経系と連携して、気(栄養・病)を伝達する経路のことです。血管や神経の様に切り刻んで目で見ることはできませんが、人間が生命活動をするのに必要な情報などを伝達するシステムが経絡であるとされています。経絡には駅のようにツボが配置されており、それらには関連する経絡の状態が反映されるため、体の状態を把握するポイントにもなるし、実際に鍼やお灸を行う治療ポイントにもなるのです。このように、経絡は体外流注各臓腑や器官を結ぶ体内流注があります。多くの経絡のうち、月経に関わる経絡は『衝脈』『任脈』『帯脈』一源三起といわれており、大変重要な役割を持つ経絡です。全ての経絡をここで説明すると書ききれませんので、月経において最も重要な『衝脈』の流れについて紹介します。衝脈は各臓腑から一定量の血を集めて子宮を満たし、妊娠能力を備えることに働きます。妊娠を迎えず衝脈の働きで子宮から血が溢れ出ることにより定期的に月経を起こす基盤となっています。衝脈は子宮に血と栄養を運ぶ最も重要な伝達系であり、当院の治療においても重点をおいている部分になります。

さて、ここでやっと月経周期異常の原因について述べていきます。
〜経早(頻発月経)について〜
<東洋医学>
気虚(ききょ)・・・気には固摂(こせつ)という作用があります。体内の物質をあるべき場所に留め、外に漏れ出さない様にする作用です。月経においては、衝脈と任脈の固摂作用が失調してしまい子宮への血流を保持できなくなり、月経が早く来朝してしまう状態を経早といいます。
血熱(けつねつ)・・・偏食や情緒不安定、体質的な要因、慢性疾患を持っている場合に体内に余分な熱が生成されしまった状態です。通常この熱は自然に消えていきますが、血に熱が入り込んだままで経期を迎えると、子宮へ注ぐ衝脈任脈が余分な熱を排出するために早期に血熱を排出する。これも経早の原因になります。
<西洋医学>
これは、洋の東西を選ばず臨床現場では必ず注意を傾けますが、不正出血が起きている可能性を除外する必要があります。例えば、子宮体癌や子宮内膜症などです。
ここではそれを除外した上で、頻発月経が起こり得る疾患に触れます。
無排卵性周期症(腎気虚証)・・・この場合、周期の異常のみではなく経血量や月経持続期間の異常も伴うことがほとんどです。卵巣機能の低下で排卵は起きないが子宮内膜の増殖と破錠出血(黄体ホルモンが分泌されないため、子宮内膜が不規則に剥脱する)を起こす。
黄体機能不全(腎陽虚証など・・・原因は不明。黄体機能の低下により、黄体ホルモン(プロゲステロン)血中濃度が上がらず早期の消退出血がみられる。基礎体温も二相型を示さず、ガタガタした形状を示します。また、高プロラクチン血症は黄体機能不全の原因になるため、病院での鑑別が有効です。
※いずれの場合も不妊や不育症の原因となるため、基礎体温を記録し排卵の有無や黄体機能を二次的に評価することも大切です。

〜経遅(希発月経)について〜
<東洋医学>
血虚(けっきょ)・・・月経の源(経水)は血であるので、この血=経水が不足すると月経が遅延する原因となります。血が不足する原因は様々で、他に慢性的な疾患がありその修復に血が優先的に使われているためだったり、気血生化の源である脾胃(消化器)の不調などで血を生成する栄養がなされない場合にも血虚になります。血虚が絡んだ経遅の場合、まずは血虚の原因となっているものから対処していく必要があります。
 気滞(きたい)・・・正常な月経周期(つまりは排卵)に必要な経絡のうち、特に衝脈・任脈の気の流れに滞りが生じ子宮に血と栄養を運ぶ機能が低下してしまった結果、血海(子宮内膜)が周期的に満ち溢れることができなくなり経期が遅延してしまう。気滞が起こる原因は様々ですが、最も多いのが仕事や生活のストレスによる抑うつや憂慮が多いと気が滞り、女性の場合は衝脈・任脈の気血が阻滞しやすくなります。
その他にも冷えを伴う症状によっても経遅は発生しやすくなります。この場合には冷えに対する治療も追加することで治療効果を上げていきます。

<西洋医学>
希発月経は、ストレスや体重の増減が激しい場合にも起こるし、頻発月経と同様に無排卵性周期症でも起こり得ます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)・・・複数の原因が影響していることが多い。最初に説明した、【視床下部(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)→脳下垂体(性腺刺激ホルモン)→血行性に性腺(卵巣)へ→卵巣から性ホルモン分泌→子宮内膜へ働きかける→負のフィードバックにより血中のホルモン量が調整される】のいずれかに異常があり、肥満(インスリン抵抗性)などの要因が合わさり発症すると考えられています。排卵に至るまでには、卵巣内で卵胞がホルモンの影響を受けながら発育し、成熟卵胞に成長し排卵する。その過程では、卵巣内では女性ホルモンだけではなく男性ホルモン(アンドロゲン)からも調節を受けています。アンドロゲン生産量が過剰になるために卵胞発育が障害され、卵巣内で発育途中の卵胞が多量に形成された多嚢胞卵巣となる。排卵がなされないため、希発月経となり不妊や男性化徴候(日本人では多くない)が見られる。

〜経乱(月経不順)について〜
<東洋医学>
※経早、経遅に比べると、やや病が進行しており治癒までに時間を要することが多い症状です。
肝気鬱結(かんきうっけつ)・・・肝気とは肝の機能を指します。東洋医学では肝の機能として、◎体内の血を蔵して必要なときに必要な箇所へ分配する調節機能、◎体内の消化機能を助けたり、性ホルモン分泌を調節する機能、◎直接月経血を調節する機能があります。また肝気は情志に影響されやすく、イライラしたりストレスによる障害が起きやすいという特徴を持っています。情志の失調により肝の機能が障害されると、月経周期が早まったり遅れることがあります。肝気が関わる経乱は、月経血量が多かったり少なかったりと一定しない特徴がります。
腎気虚(じんききょ)・・・同じく腎気とは腎の機能のことです。腎の機能は、成長・発育・生殖です。また、五臓六腑の陰陽の源とされ、すべての臓腑機能をバックアップしています。若いことで腎機能が充実していないために起こる経乱もありますが、これは初潮から間もなく起こる現象で問題にはなりません。慢性的な疾患を持っていて、長期間に渡り腎気が消耗されると、腎の生殖機能が失調して月経周期が一定しなくなります。この場合、月経血量は少ないことが特徴です。

月経周期異常や不妊症を治療する際には、東洋医学の根本である『陰陽説』も取り入れています。
例えば、基礎体温の低温相と高温相の変化は陰陽消長・陰陽転化の現れと考えます。典型的な例として黄体機能不全による基礎体温の乱れは陰陽消長に問題があると捉えていきます。
この様な捉え方は、基礎体温だけではなくホルモン分泌のバランス(負のフィードバックによる調節)や自律神経の働きなどは、東洋医学では昔から陰陽の視点で捉えられていたのです。どちらもシーソーのように切り替わるのではなく、ヤジロベーのようにゆったりとそのバランスを保ちながら変化していくことが大切であると考えています。ですので、当院の治療はいつもヤジロベーのバランスを取り戻していただくことに重点を置いています。
 <西洋医学>
※これまで述べてきた疾患すべてで起こり得ます。
視床下部ー下垂体ー卵巣系に何らかの要因が加わると、月経周期の異常が生じます。月経不順(経乱)はその結果として現れる症状です。
ある程度の卵胞発育とエストロゲン分泌はあるものの、無排卵でプロゲステロンの分泌がされていないことも多いので、原因疾患を明らかにする必要があります。
また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)も月経不順をもたらす原因疾患のひとつです。

注意!!実際には、様々な要因が複合的に作用して発症していることが多いので、ここで述べたことが全てではありません。詳しくはご来院時に、貴女の症状をご相談ください。

きゅうあんの施術

東洋医学では、「病因病機を掌握し、陰陽病変の所在を明らかにする。」ことを重視します。
特に月経周期異常の場合には、
①卵巣や子宮に注ぐ気血経絡の流れを順調にすること。
②卵巣と子宮そのものの機能を回復させること。      も重要なポイントです。
つまり、
・どの臓腑のどの機能が失調しているのかを把握し詳細な問診と身体診察・・東洋医学では四診合参といいます。
 今までに述べてきた原因やそれ以外の要因を見つけ出し、無駄のない的確な施術を行うために。
・原因に直接アプローチする治療卵巣機能向上と正常な子宮内膜周期・・解剖生理学的に最も効率の良い手段で。
 卵巣と子宮への血流や神経伝達を円滑にするため、それらを調和する経絡の調整穴(ツボ)の組み合わせ。
・体質を改善する治療→東洋医学の本治法を行う・・全身の気血の巡りを調和させ、体内の生理機能を正常にする。
 本治法とは、全人的治療で体質を改善すること。卵巣・子宮の機能を中心に臓腑の働きを正常に保つこと。
全身の血流を促す星状神経節への近赤外線照射・・交感神経の働きを抑えて、全身の組織器官への血行を促すこと。
 特に、脳血流を促進する。性ホルモン分泌の上位である視床下部-脳下垂体の血流を改善すること。(視床下部から脳下垂体へのホルモン分泌は血流による液性分泌)

スーパーライザー(近赤外線照射装置)の併用>
スーパーライザーは、光の中で最も深達性の高い波長帯の近赤外線(0.6~1.6μm)を高出力でスポット状に照射することを可能にした初めての光線治療器
その効果はペインクリニックをはじめ各科で認められ、医療現場で大きな注目を集めています。
スーパーライザーによる星状神経節照射と鍼灸治療を併用することで、より優れた治療効果を発揮します。
星状神経節とは、のどのところにある星状神経節という交感神経細胞が集まって太くなっている神経の部分です。
星状神経節照射(SGL)は、この星状神経節に近赤外線を照射し、交感神経部の作用を抑える療法で、安全・無痛であることから非常に受け入れやすい治療法です。
この療法は自律神経の中枢である視床下部に影響を及ぼし、全身的に交感神経の緊張を緩和します。
交感神経の過緊張は、血流の巡回障害が起こり、ホルモン分泌が乱れ、病気を防ぐ免疫の働きも低下するというように、全身的にさまざまなトラブルを作り出し、様々な病気や
症状が起こってくるわけです。それに対して、星状神経節照射療法は、おおもとの原因である交感神経の過緊張を緩和するので、色々な病気や症状が治ってくるのです。
ライザープレゼンテーション

そもそも人の体には、体内に生じたいろいろな機能のアンバランスを元の状態に復元しようとする作用「ホメオスタシス」(生体の恒常性維持)の機能があります。
「ホメオスタシス」とは、体温の調節、代謝の調節、ホルモンのコントロールといった生体の恒常性を維持するためのさまざまな働きのこと。
これを統括しているのが視床下部です。視床下部は、免疫系、内分泌系、自律神経系へそれぞれ指令を発して体の恒常性維持を図っているのです。
星状神経節照射は、その視床下部に作用して自律神経系、内分泌系の歪みを直し、ホメオスタシスを回復させる治療なのです。

視床下部調節系
星状神経節照射の自律神経系に対する作用は、まず全身の交感神経の過緊張を緩和し、うっ滞していた血行を改善することです。
皆さんがそれぞれ持っている自然治癒力を発揮させるのが血流です。血液の中には細胞を活性化する酵素や栄養分とともに免疫物質もたくさん含まれています。
ですから、血液循環をよくすることが、あらゆる病気の治療法の基本なのです。

きゅうあん鍼灸治療院の願い。
  それは、、、
 より多くの女性が健康を取り戻してほしい。
 より確実に良くなっていただきたい。

 それにはまず、貴女の体質を改善することが大切です。
 体質を改善して、健康な体を取り戻すお手伝いをさせて頂きます。